くわだてありき(Bandsearchlightブログ)

吹奏楽(全国大会以外)とかコンサートホールとか高架下とかの話が主です。

【速レポ】SIOフィルとは一体いかなるバンドなのか

昨日夜、池袋の東京芸術劇場にて行われた『東京芸術劇場コンサートホール  SIOフィルハーモニックウインドオーケストラ  ドリームコンサート2018』を聴いてきた。

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個人的にはもう何度も聴いている演奏会シリーズだが、いまだご存知でない方のためにちょいと解説。

東京音楽大学ブラスの話をする時、汐澤安彦の存在を抜きにしては語ることあたわず、である。汐澤を慕って、その還暦や古希を祝う記念オーケストラが、主に東京音大卒業生有志によって催されてきた。また、2012年の第1回を皮切りに、吹奏楽編成においてもSIOフィルウィンドオーケストラという形で演奏会が開催され、今回はその第4回というわけだ。

 

毎回その「超大編成」には定評があるが、今回はバンダを含めると139人というから、もう笑うより他にない。またオーケストラなど、第一線で活躍中の奏者がずらずらと揃うメンバーリストも一見の価値あり。さながら、吹奏楽の「サイトウ・キネン」のような様相を呈している、と言ったら少々言い過ぎだろうか。

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しかし、闇雲に大きいのがいいわけでもない。少子化に伴い世の吹奏楽編成は年々小さくなり、世の中には小編成用の作品もますます増えてきた。フレキシブルアンサンブル、というものがここまで吹奏楽業界に定着しようとは、コーディルの”民話”がはやっていた半世紀前など、誰も想像できなかったに違いない。

ではなぜSIOフィルは、ここまで皆の気持ちを駆り立てるのだろうか。

 

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挙げられることとしてはまず、とてもじゃないけど100人を遥かに超える人数で吹いているとは思えないということ。人が増えれば増えるほど、全員の意識の統一は難しくなるのが自明であるが、あたまから尻尾まで汐澤先生を慕って集まった奏者で埋め尽くされたステージは、どれだけの弱音でも、また強烈すぎるフォルテシモでも、ゆがんだり狂ったりすることがない。恐ろしくなるほどだった。時々演奏中に、わけもなく笑いが止まらなかった。

 

強奏が爆音かつ美音なのは当然として、弱奏の繊細さ、そして音程がニュアンスまで整っていることは、人数を考えると驚嘆に値する。それでいて、各奏者が自発的によりよいサウンドを求めている様子も、手に取るように見える。

 

レパートリーの再発見ということも記しておくべきだろうと思う。前回だったか前々回だったか、オリバドーティの「バラの謝肉祭」がとてつもない演奏だったのを覚えている。今回はJ.A.コーディルの「バンドのための民話」がチョイスされていた。流行り廃りの激しい吹奏楽のレパートリーの中で、いつしか忘れられた名作をもういちど(しかも滅多に聞けないようなとびきりの演奏で)聴かせてもらえるのは至福の一言。

 

また、一流の奏者が集まるからこそ得られる極上のパレットが、汐澤先生の意欲をさらにかきたてているように見受けられた。何をやっても非の打ち所がないサウンドで応えられるのだから、普段はできないようなことだって、沢山やりたくなるだろう。

 

ソロの美しさは一つ一つ言い出したらきりがない。ひとつだけ(元クラ吹きとして)言わせて貰えば、プログラム上のラスト、レスピーギ『ローマの松』第3楽章「ジャニコロの松」でのクラリネットソロ(勝山大輔・コンサートマスター)は、完全に今まで聴いたどの演奏よりも素晴らしかった。

 

 

望むことのできる最上級の吹奏楽を昨晩は聴けたのだ、と思うと、思わずまた胸があつくなる。極上のパレットから生み出される至芸、同じ指揮者を慕うから、同じ釜の飯をくった仲だからこそできるアンサンブル。
そう、おそらくSIOフィルとは、皆の中にある「吹奏楽イデア」が地上で見られる姿なのだろう。

 

まったく、どなたさまもお疲れ様でした。主催の某河野氏に来年の予定を尋ねずに帰ってきてしまったが、間を空けつつもここまでやってきてくれたのだから、きっと次回があると楽しみにしている。

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相変わらず「第3部」的なアンコール。
(たまには別のも聴きたいなあと思ったのは、こっそり言っとこう)
今年は8曲でしたとさ。

 

 

音楽堂これくしょん 野方区民ホール

今回お邪魔したのは、野方区民ホール。中野区がJTBコミュニケーションズに委託して管理している音楽堂です。

www.nicesacademia.jp

高田馬場から西武新宿線に乗って5駅のところにある、野方駅が最寄りです。ラッシュアワー高田馬場の狭いホームに人が溢れますが、その方々のほとんどは特急に乗りたいので、野方へ行く各駅停車は比較的空いていました。 小ぶりな駅を降りると改札はひとつのみ。北側と南側に分かれているので南口のほうへ降ります。商店街をずっと進んでいくと、ちょっと傾いた十字路があるので、左折します。狭い路地を進んでいった先に、バスのロータリーが見えてきたら、その奥の大きな建物が、野方WIZ。ホールはその地下にあります。駅からは徒歩5分以内といって差し支えないでしょう。

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(これは階段の下から撮った様子です)

 

階段を降りた先に入り口があり、小ぶりなロビーが。このホールのキャパシティは248席なので、地下にあることも考えると、妥当なスページングなのかも。
このロビー、狭いのですが何故か高めのカウンターのような机とイスがたくさん置いてあります。ドリンクなどのサービスは無いようでしたが、自動販売機はあり。感想などを知人友人とおしゃべりするには収まりのいいスペースですね。満席の公演後なんかはちょっと立て込んでしまう可能性がありそう。

 

 * * *

 

さて、ホールの中に入るには、このロビーに面した入り口から階段を上がって2階席に上がるか、ロビーの左右の通路を使って1階席に上がるかのどちらかです。
とはいっても、1階席はのぼっていけば2階席に到達するので、どちらから入ってもさしたる違いは無いでしょう。 平土間と呼ぶにはちょっと狭いですが、1階席は4列あります。ステージとの間隔はあまりないので、1列目はかぶりつきです。この1階席66席は客席下に収納でき、平土間部分もステージの延長として使用することが可能のようです。2階席は階段状で、1段あたりの高さはわりあい高め。前の人の頭をあまり気にしないでステージを眺めることができるでしょう。

 

HPの正面写真を見ていただくと、通路が左右2箇所にあるのがわかります。右・左のブロックは1列に4席ないし3席しかないのですが、この部分はかなり居心地が良いです。航空機と同じですね。

 

さて、席にすわって天井を見ると、音楽ホールとしてはけっこう低め。やはり地下ホールの宿命でしょうか。かわりに照明設備が充実しているのが見て取れます。客席上部にも、サイドにも、たくさん機材がありました。演劇で利用するにはかなり融通がききそうです。逆に音楽利用の場合は、基本形態がプロセニアム形式のうえ、反響板がデフォルトでないので、響きは厳しめになるでしょう。ホールの壁面が石造りなのも、響きに影響していると思われます。(設備に音響反射板が借用できる旨ありますので、それを使えばある程度改善されるでしょう)
最近Googleearthが導入されたようで、HPにいくといろいろ見て回れます。

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 * * *

 

ホールを借りるには、【区民・区民団体】の場合は10ヶ月前の各月18日、その他の場合は9ヶ月前の各月18日に抽選会(予約方法 文化施設)があるとのこと。月初日ではないので、ホール探しをしているみなさんは注意が必要かも。

お値段帯は入場料によって2パターンあり、1,000円以下の場合は土日祝日1日で79,500円、1,000円以上の場合は113,700円となります。区分を区切ればもうすこし出費を抑えられるでしょう。

 

野方という立地は、地元や路線利用者でないとあまり馴染みがないかもしれませんが、駅からもそこそこ近いので利用も多そうです。都心からのアクセスも時間がかからないので、なかなかの立地だといえますね。

利用案内は下記から↓
中野区 ないせすネット 「野方区民ホール」

 

(Noteより転載:https://note.mu/urunatsuki/n/n41eb5fa5db50?magazine_key=mfea9fbdd312a

音楽堂これくしょん 三鷹市芸術文化センター 風のホール

東京のまんなかあたり、都心とはちょっといいにくくなってくるとはいえ立派に東京都内のJR三鷹駅からアクセスできるホールは、さていくつあるでしょうか。北口の方へずずいと進めば武蔵野文化会館(公称では徒歩17分)。クラシック愛好家の間では敬意をもって「むさぶん」なんて呼ばれます。そして反対側へ進めば、今回お邪魔した三鷹市芸術文化センター 風のホールにたどりつくという訳です。

むさぶんは(よく知られているとおり)確かに遠さはあるのですが、一本道をひたすら進めばよいので気が楽です。道のわかりづらさでは、三鷹市芸術文化センターのほうが若干上だといえるでしょう。2、3回かくかくと曲がって、大通りをひたすら歩きます。公称『約15分』ということになっていますが、体感的にはもっとかかったように感じました。知らない土地でもバスに乗るのが得意というつわものな方は、駅前からバスで3駅をおためしください。バスって駅前のたくさんあるバス停から行き先を選ばなければいけないというシチュエーションがもっとも難易度が高いと思うのは、私だけでしょうか。帰りはホールの目の前にあるバス停から乗れば自動的に駅まで運んでくれるのですから、だいぶ気が楽です。

緑ゆたかな八幡神社の角を越せば、あと少しです。ようようたどり着いたのはモダンな外観の大きな建物。複数ホールをもつ総合文化会館タイプですね。

 風のホール…625席の音楽ホール、

 星のホール…250席の多目的ホールは演劇、古典芸能もよくやるようです。

 ほか、創作・展示室や音楽練習室を有しています。

 カフェレストランも併設。しっかりしたランチ・ディナーも楽しめそうです。

 

ホール正面の入り口を入ると、ひろびろとしたロビーが。ベンチもたっぷりで、待機場所としても有効です。というかここで、歩き疲れた足を休めなくては先に進めません。星のホールの入り口が手前にあり、風のホールの入り口は最奥。なにかにつけよく歩く日です。

ロビーもそうでしたが、ふんだんに木を使った内装は落ち着きます。床と1階席の壁面、椅子に木が使われており、音響は大変優秀。HPでは満席時1.8秒とのことでしたが、2階席ではより残響が大きくなるように感じました。シューボックス型の客席の、だいたいどこに座っても響きは良いでしょう。ただしサイド席は売り止めになるか、売っても角度が大きいので、そこは注意が必要でしょう。

音の特徴としては、すみずみまで音を見通せるという印象。室内楽全般、歌ものでもリートのような曲目が映えるだろうなあ。また、普通のホールでは物足りなくなる室内楽編成のオケや古楽オケなどでも、十分に魅力を楽しめるように思います。

利用価格は平日全日で100,000円、土日祝で120,000円。(区分使用ならもすこしお安い)収容人数を考えるとリーズナブルに思えますが、三鷹というアクセスが果たしてどう影響するのかは、催事内容とも要相談かも。平日夜の公演だと、電車は通勤ラッシュとかぶります(おまけに人身事故など起こったら遅れは必須…)

地味に注目すべきなのは、一般客の使える駐車場があること。地下タイプで47台収容と台数は少な目ながら、都心に近い立地で駐車場はなかなか無いでしょう。早めに来ていないと難しいかもしれませんが、アクセスに悩む貴兄には一考の価値ありかもですね。

mitaka.jpn.org

 

(noteより転載・初公開2016/7/17)

【niche】横浜市の区にはだいたい区立のホールがあるという話

このまえ何の話題だったか、Twitter上で横浜市内のコンサートホールのはなしを見かけたんです。区立のホールの話題でした。話の内容は全然おぼえていないんですが、横浜市にはほぼすべての区にひとつ以上はコンサートホールがあるんですよね。区立で建てられたホールもたくさんあります。

思い立ってしまったのでぽちぽちと列挙したのが以下。

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鶴見区 サルビアホール
神奈川区 かなっくホール
西区 みなとみらいホール、県立音楽堂ほか
中区 KAATほか
南区 吉野町市民プラザ
保土ヶ谷区 かながわアートホール
磯子区 杉田劇場
金沢区 金沢公会堂
港北区 横浜アリーナ大倉山記念館
戸塚区 さくらプラザ
港南区 ひまわりの郷
旭区 サンハート
緑区 みどりアートパーク
瀬田区 杜の公会堂
栄区 リリスホール
泉区 テアトルフォンテ
青葉区 フィリアホール
都筑区 都筑公会堂

ぜんぶで18区で、あってますよ…ね?(

 

リストには昔ながらの公会堂も含んでしまっていますが、どうかご容赦。いわゆる区立で建てられたものとしては、フィリアホールリリステアトルフォンテあたりが代表格でしょうか。ユニークな取り組みとしては磯子区杉田劇場。コンサートホールではなく、あえて演劇も(和物ができるよう、花道の設置ができるつくり)可能な箱です。運営も地域と連携し、独自の域に達しています。それぞれ500席以下のこぶりな箱が大半ですが、そこまで大きくなくとも、区民の発表会や何かの用には十分ですし、大きすぎると逆に不便なことも多いです。
湾岸地域の栄えているあたりにはそれこそ2000席規模の大きなホールもたくさんありますしね。そういえば最近ではこんなニュースも聞かれます。

 みなとみらい
 音楽会場 新設続々と 横浜

https://mainichi.jp/articles/20171114/k00/00e/040/139000c

 

すぐアクセスできる場所に、音楽や演劇を楽しむ場所があるかどうかはけっこう重要なこと。その点、横浜の環境はかなり恵まれていると言えるでしょう。大きなホールも小さな区民ホールも充実して、横浜はますます日本の音楽のメッカとして狙いを定めているのやもしれませんね。

無色の時間

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 端っこの方とはいえ音楽にかかわる仕事をしていると、ときどき『まっさらな時間』がむしょうに欲しくなる。仕事でも音楽を聴き、行きかえりの満員電車をまぎらわすために音楽を聴き、街を歩いているときには街頭のざわめきやストリートミュージシャンの歌声。店に入れば店内BGM。
 家に帰り着いた時には、空白の時間が欲しくてしょうがない。でもTVもあるし、ラジオもあるし、インターネットでは動画も(そして動画についてくる広告の数々も)有音なわけだ。


 街を歩いているとき、イアホンをしていてもなにも流さない、流したくない時があるのだけど、最近その頻度が増えたような気がする。遮音、耳栓替わりに使っているのかもしれない。でも音楽が流れていなければ、話しかけられても反応できるし電車のアナウンスだって案外聞こえる。無音イアホン、意外と便利だ。

 

 居合わせた人のつくる雑音や外の喧騒を聴く「4分33秒」が作曲されてから、もう60年以上の時が経った。初演当時は人々を不安でざわめかせた「無音」に、いま私は別の意味あいで強く惹かれてしまう。どこにいっても何かを聴かなくてはならない状況からのがれたい衝動がある。現代に生きる日本人は、楽音のない部屋で澄んだ空白の時間を享受したいと欲するようになったのですよ、とケージに言ったら、なんと答えてくれるのだろう。

 

 そんなようなことを考えてしまったのは、電車の中でよんだこの記事のせい。

 みなさんはどう思われるだろう。

trafficnews.jp

 

 

 

埼玉県新人戦

 夏の全日本吹奏楽コンクール、冬のアンサンブルコンテストに加え、近年新たに年中行事となりつつあるのがこの「新人戦」です。1/14日に埼玉で開かれた、第10回となる新人戦の様子を少しばかり見てきたので、レポートします。

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  埼玉県内の吹奏楽関係、学校関係者で発足し、冬季の比較的忙しくない時期の目標として各校の参加を募ったのがきっかけで、いまやすっかり定着した感があります。

新人戦は3年生引退後の時期に、新たな目標をもって新年度の体制を準備するきっかけにして頂こうと、年明けの1月からコンクールの県予選を開催しています。生徒及び指導にあたっている顧問の先生方がしっかりとした目標をもって活動が行えるよう企画したものです。そのため、競うことだけを目的とせず、他団体の演奏を聴くことで今後の練習のヒントが1つでも見つかればと思っております。

                                (埼玉吹奏楽コンクール新人戦 公式ページより引用)

 申し込みは9月末から受け付け、 申込数の多い場合は抽選になるようです。今年は中学が約60団体、高校が約40団体で、参加費審査料が1団体につき10,000円のほか、参加者1人あたり500円の参加料がかかります。いわゆる「都市吹奏楽フェスティバル」のようなものでも参加料を取るところがあることを考えると、審査員にきちんとみてもらってこの金額なら、検討する学校が増えるのも頷けます。

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