くわだてありき

田橋るう(たばし るう)です。吹奏楽とかアトマネとか高架下とかのはなしをしてます。

MidwestClinicはじめてレポート(その5・22日後半)

前回に引き続き、ミッドウェストクリニックの3日目(22日)の模様をレポートします。

(※前回までの様子はnoteから随時移植します)

 

後半戦は、まず同族アンサンブルのコンサートから。

 

◆14:30~15:15 Creekwood Middle School Percussion Ensemble

 シンフォニーバンド、ブラスバンドにオーケストラ、ジャズなどの他、MidwestClinicには、同族楽器のアンサンブルもコンサートをしていました。今度はその中から、中学生による打楽器アンサンブルのコンサートに行ってみます。

 テキサス州ヒューストンからやってきた、クラークウッド中学の打楽器アンサンブルです。バンド全体でも大変優秀なようですが、今回は14名のパーカッションのメンバーのみの演奏です。http://creekwoodband.weebly.com/ 

 会場はW190。まだ入ったことのない会場です。これまで歩きなれた場所から割と遠い位置にあり、会場内の案内を見つつ右往左往。なんとか開演5分前にすべりこみました。アプリから地図は見ることができるのですが、あまり親切なつくりではなく、私には使いこなせませんでした。もっぱら頭上に掲げられた案内表示に頼っていましたが、いかんせん会場が大きすぎるので、移動には結構な時間をとられていました。

 さて入ってみた会場はというと、約200席くらいの縦長の形状です。ステージの近くはほぼ埋まっていたため、できるだけ前のほうに座るためちょっと席を探しました。舞台上にはすでにセッティングされた打楽器がずらり。すぐに開演の時間となり、入場してきた演奏者たちは腕まくりした黒いシャツに黒いパンツ姿で統一。まだあどけない顔の子が多い印象を受けます。

 

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 すでにセッティングされた楽器を眺めると、鍵盤楽器の多さが非常に目に付きます。大小のマリンバグロッケンシュピールヴィブラフォン。遠目では種類の判別できないものも含め、ばちで叩く鍵盤楽器の数は日本の打楽器アンサンブルに比べ非常に多いです。チューブラー・ベルにピアノと、ステージ上はかなりの豪華さ

 学校のバンドの発表のため、作品はグレードは6(非常に難しい)からグレード1(非常に易しい)まで幅広く取り上げています。(そのような規定になっているという追加情報を得ました)すべての奏者が演奏する作品が半分ほど、それ以外の曲は4人だったり8人程度であったり。その都度降り番があり、時々はセッティングの変更もありましたが、基本的な楽器はすべてステージ上に置いたままで、一部の楽器の位置をずらして演奏しやすい形態をとる程度の配置換えが行われていました。4重奏では2回とも同じ男の子4名が演奏していたところを見ると、学年が上の子たちのみでの演奏、もしくは特に優秀な子たちのみでの演奏というようにメンバー選抜をしているのかな、という印象を持ちました。それ自体は別に問題ではなく、より習熟度の高い生徒にデモンストレーションをさせるというのは理にかなっているものだと思います。実際彼ら4人の技術はすばらしいものでした。また、ピアノを効果的に取り入れた4曲目"Now the Day is Over”はゆったりとした美しい曲でした。

 バンド(ルーディメンツドラムを装備した写真がプログラムに載っていたので、マーチングも同じ子たちがやっているのでしょう)の他にこうした打楽器アンサンブルもやっているのだとしたら、なかなかやることが多くて大変なのでは、とよけいな心配がつい心をよぎります。しかし、日本のアンサンブル・コンテストでは滅多に取り上げることのできない性格的な作品や大規模な作品に取り組み、のびのびと演奏を楽しんでいる様子には、感銘を受けざるを得ませんでした。

 すべての演奏が終わり、再びの移動のために荷物をまとめていますと、近くに座った男性が話しかけてくれました。

 「すごいいい演奏だったよね?」本当に。Amazing Performances. 訳知り顔だったので、もう一言「彼らは本当に中学生なの?」と聞いてみると、彼は大きくうなずき、8th grade.と。なるほど、8年生(日本でいうところの中学3年生)がメインメンバーだったのですね。

 

◆16:00~17:15 The United States Coast Guard Band

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 演奏会のはしごが続きますが、次は日本でもおなじみ、The United States Coast Guard Band(アメリカ沿岸警備隊)の演奏。第2部も聞きたかったのですが、あまり遅いとまた夜道が心配なので第1部のみにしました。最も大きなW375ABで、しかも1部・2部の2回公演とあって、期待度の高さが伺えます。客席は文字通りの大盛況。前のほうから見る間に席が埋まっていきます。早めに会場入りできたのでなんと前から3列目に座れたのですが、これがあとあと思わぬ展開に。

 司会者の言葉が終わると、すぐさまプログラムにはないアメリカ国歌が(なんの断りもなしに)に演奏されはじめ、おもむろにすべての観客が立ち上がります。びっくりしながら同じように起立してきょろきょろすると、どうやら起立するだけで、胸に手をおいているひとはいない様子。さらに前奏に引き続き、これまた当たり前のように皆歌い始めます。メロディーはともかく、さすがに歌詞まではほとんど覚えていない身としては、ふむふむ唱えるのが関の山、ちょっと前のほうに座りすぎたなあと冷や汗をかいた体験でした。

 セレモニーが終わってほっとしながら座ると、間髪いれずにスーザのマーチが始まります。アメリカに来てから色々なバンドを見聞きしてきましたが、そのなかでも群を抜いた完成度です。明るい紺に赤いふちどりの制服は、会場ですれ違うと少々派手な印象でしたが、星条旗と並んで映し出されるとなるほどというカラーリング。

 次は編成をぐっと少なくして、ストラヴィンスキーの「管楽器のための交響曲」。アメリカの、しかも軍属のバンドがやるというのはなかなかないのではないでしょうか。一糸乱れぬアンサンブル、上品なのですがパワーのみなぎった音は迫力満点で、国を背負って演奏するという気概をひしひしと感じます。さらに大曲、ホルストの「第一組曲」が続きますが、これは意外なことに全楽章の演奏。大きな作品は楽章を取り出して演奏されることが多かったので、ここに注力しているのかと非常に気持ちも高まります。指揮をとったH.Robert Reinolds氏の手腕は見事の一言。楽章間の切れ目はほぼ無く、すべてアタッカで演奏されました。終わったあとの熱狂的なスタンディングオベーションに加わりながら、これらの作品が2017年のいま、ここで演奏される意味に思いを馳せてしまったのは、私だけではなかったでしょう。

 

 プログラムには記載されていませんでしたが、ホルストのあとにスペシャルプログラムが追加されていました。障がいを持った子どもたちに対する教育をしているJulie Duty女史と、実際にプログラムに参加している子どもたち、そしてそのメンターたちが入場して、バンドの間に座ります。そう、1日目の記事でご紹介した、彼らがなんとアメリカ沿岸警備隊と一緒に演奏するというのです。障がいを持った子どもは3、4名で、1人につき3人の、同年代のメンターがついています。私の座った位置からは、ユーフォニアムを抱えた障がい者の男の子が良く見えました。演奏が始まると、メンターの3人が手分けをして、楽譜上の現在地点をリズム良く示したり、指使いをアドバイスしたり、一緒について演奏の手伝いをしている様子がよくわかりました。おそらく楽譜は通常のものではなく、少々楽に編曲されているものと思います。障がい者の子どもは周りの様子に気を取られることなく、集中して楽器を吹いています。いままで見たことのある障がい者のための音楽実践では、曲の途中で他のことに気をとられたり、楽器の前からいなくなってしまうなどの例も多く見てきましたが、手厚いメンターたちの声かけで状態がとても安定しており、また少人数なのも功を奏しているように見受けられました。

 演奏し終わって起立し、バンドの奏者たちからも観客からも拍手をもらっている様子は、とても誇らしげで達成感に満ちていました。彼らのようなひとびとが、アメリカのバンドをする少年少女の憧れ、アメリカ沿岸警備隊バンドと一緒に演奏するというのは、非常に意義深いことだったと言えるでしょう。

 

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 たくさんの名曲を聞き、素晴らしい実践の様子も見ることができて大満足でしたが、なんと最後のArmed Forces Medleyにてダメ押しのサプライズが待っていました。アメリカの各軍のマーチをメドレーにしてあるのですが、司会の呼びかけで、陸軍のマーチではArmyの制服を着た人たちが、海軍の時にはセーラー服を着たNevyの人たちがその場に起立して、という心憎い演出が行われたのです。アメリカの軍隊に対する敬意を肌身に体験することとなりました。陸、海、空、海兵隊、そして最後に沿岸警備隊のマーチではバンド全体も起立して、大団円のうちに幕となりました。