くわだてありき

田橋るう(たばし るう)です。吹奏楽とかアトマネとか高架下とかのはなしをしてます。

MidwestClinicはじめてレポート(その3・21日)

 1日目にだいぶとばしてしまったせいか、2日目は少々スローダウン。
 ホテルの朝ごはんはけっこう美味しいのですが、時間までに起きられず、食べそびれました。明日22日は朝から観たいものもあるので、あまり無理せずに(1人旅ですから、自分だけが頼り…!)4日間の長丁場を楽しみたいと思います。

◆10:30〜11:00 CHAT ROOM Q&A with Composer John Mackey 
 遅く起きてまず向かったのはW180教室で行われる、ジョン・マッキーに質問をする会でした。…のですが、長蛇の列。入り口のドアが見えないほどです。

 アメリカ人の並び方、並ばせ方は、日本人からするとけっこうな雑さで、でも「郷に入っては郷に従う」と言いますし、まわりも横入りなどはしません(マナーの意識が強いようです)ので、待つしかないか、と思っておりましたらなんと……定員オーバーで入場すること叶わず。

 W180は昨日のセッションで入りましたが約100名ほどの会場だったので、さきほどの行列の長さから言って、まあキャパオーバーになるのは自明でしょう。もう少し大きい会場にしてくれていたら…と恨み節を言ってもしかたありません。それだけアメリカでもジョン・マッキーの人気は凄まじいということがわかりました。

 

 

◆11:30〜12:15 T.A.Howard Middle School Honor Band
 涙を飲んで別会場を探します。そういえば昨日は高校生のバンドを観たので、中学生もみておきたいと思い立ちました。375EはABよりも小さいですが、奥行きは同じ、立派な大会場です。かなり空いており、客席の割と前の方をゆったりと陣取ることができました。
 基本的にホールの椅子はすべて可動式で、隙間なくずらっと並べてあります。アメリカ人は体の大きな人も多いので、みんな意識して詰めて座ったりせず、余裕を持って荷物を椅子に置いている様子。(昨日のDocのコンサートは席がなくてアナウンスが2.3度入っているほどでしたが、これは例外でしょう)普段日本のコンサートホールで気を使って座っているのとはたいへんな違いです。でも、広いっていいなあ、自由席っていいなあと、なんとなくほっとしている自分がいるのも事実です。

 さて、中学生の演奏者たちが入場してきました。これもこのバンドのみではないですが、コンサートに出演するバンドメンバーは制服ではなく、基本的に皆ブラックフォーマルを着ています。女子のドレスは日本のオケ団員が着ているような、シックなものを想像していただければと思います。男子は蝶ネクタイです。個人的にはコンクール時などにスカート丈を気にするより、こちらのほうがよほど演奏に集中でき、また周囲からも一人前の演奏家として扱われているように感じました。
 Honor Bandなので、ある程度選抜されたメンバーが集まっているのでしょう、演奏クオリティはとても高いものでした。配布プログラムによると総勢66名、8年生(日本でいう中学3年生)がメンバーの約半分だとのこと。bassoonが3名、oboeも3名、バスクラも3名と、なるべく1パートを複数人で担当させるというポリシーが感じられます。楽器を構えるタイミングなどは結構バラバラなのですが、それでも音は揃っており、余計な身振りなどはなく、皆、音に集中している様子が印象的でした。ちなみにチューニングをGでしており、これはこのあとのいくつかのスクールバンドでも見受けられて、面白いなと思いました。必ずしもBやAでチューニングしないのですね。

 曲ではM. Markowski(マイケル・マルコフスキ)のReckoningという作品が印象に残りました。1986年生まれの若い作家で、この作品は2017年の新作とのこと。(詳細はこちら→http://windliterature.org/2017/06/02/reckoning-by-michael-markowski/
)グレード不明ですが、変拍子のシリアスな曲にもかかわらず、演奏しているほうはすんなりと受け入れているように見受けられました。(たくさんリハーサルを積み重ねた結果なのかもしれませんが)吹きにくそうな部分が少ない、と感じました。アメリカの作品らしい素直なカッコよさでした。また、ドヴォルザーク交響曲第9番の第2楽章をやる際には、例のコーラングレのソロのためにきちんと持ち替えがあり、曲のはじまる前に短く音出しをさせる時間もとっていました。

◆15:15〜16:15 Martin High School Symphony Orchestra
 今度はオーケストラを聞いてみます。バンドの祭典だと思われがちのミッドウェストクリニックですが、じつはオーケストラやジャズ、同族楽器アンサンブルなどの充実ぶりにも目を瞠るものがあるのです。高校生のスクールオーケストラをチョイスしました。
 テキサス・マーティン高校の高校生たちによる総勢80名以上のオーケストラです。特筆すべきなのは、取り上げる曲目が既存のクラシックのみでは全然ない事。そう、吹奏楽のプログラムと全く同じように、今年の新作が半分以上を占めており、グレードが決められているのです。(※先日、グレードの書かれているプログラムとそうでないものがあるとお伝えしましたが、要はプログラムのつくりが団体によって様々で、書いているものといないものがあるというだけのようです。)
 こどものオーケストラというと、日本ではよほど入門者のみのオケでなければ既存の作品を取り上げることが圧倒的に多く、しかも弾きやすくするための編曲などはなされないものですが、たとえばこの日取り上げられたものの中には、一部分だけ抜粋されたリムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」や、ポンキエッリの「時の踊り」などが見られました。
 必ずしも特別な能力を持っているわけではない子どもたちで、特にパーカッションは技術の届いていない場面も少なからず見受けられるものの、それを作品がカバーし、音楽の喜びと、段階的なステップアップの助けになっているのだろうということを思いました。(ちなみにコンサートマスターの男子は非常によくリードしていたことを、オーケストラの名誉のために申し添えておきます。)こうしたものを見ることができて、改めて、無理してでもシカゴまで飛んできてよかったなあと感慨を深くしました。

◆16:30〜17:30 Middle School Band Rehearsal Lab
 今回は「はじめて」でもあるので、全体としてミッドウェストクリニックのいろいろな形態のセッションをあれこれ見てみたいと思っていますが、リハーサル・ラボでちょうど時間にあうものがあったので訪れました。会場はW183、中に入ると横に長い部屋の真ん中にステージが組まれていて、正面と左右に並べられた椅子はおそらく300名分ほど。
 最初に司会者から指導者の紹介がされます。モデルバンドは非常に小さな町の中学校のバンドとのこと。全校生徒の8%がバンドメンバーだという説明がかろうじて聞き取れました。なんだか日本でも同じような状況があったなと思っていましたら、Mary Landという女性指導者が背筋をぴんとして指揮台にのぼります。私の座った席はサイドで、ステージからとても遠かったのですが、左右に大きなモニターが設置されていて、正面から指導者を捉えた映像を適宜流してくれるので非常にわかりやすく感心しました。
 基本的にはグレード2ほどの曲のリハーサルを通して、どのように曲を仕上げていくかを直に見せるというデモンストレーションが行われます。楽器を一度口から離し、声で歌わせることで音楽の流れを理解させる手法、アクセントやアーティキュレーションを口で歌って真似させたり、様々な方法でリハーサルが進められていきます。大元は自分自身がティーンの頃に経験したリハーサルの手法と同様なのですが、ふと感じたのは、日本の子どもたちと、アメリカの子どもたちでは、当たり前ですが備えている特徴が違うでしょうから、アプローチの方法は変わって当然だということです。たとえば(海外ドラマでよく見るクラスルームの描写のように)教師が子どもに話しかけるように質問し、それに活発に答えが返ってくるという状態は、日本ではあまりみられないでしょう。同じように、日本のような(言い方は悪いですが軍隊式の)指導方法がアメリカで同じように使えるかと言われたら、答えはNO、だと思います。
 日本にて、今年はどこのバンドがミッドウェストのモデルバンドとして招聘された、という話を聞くにつけ、すごいぞとしか思っていませんでしたが、果たしてその様子は、アメリカの人々にどのように映っていたのでしょうか。そんなことを考えていたら、あっという間に時間が経ってしまいました。

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