くわだてありき

田橋るう(たばし るう)です。吹奏楽とかアトマネとか高架下とかのはなしをしてます。

埼玉県新人戦

 夏の全日本吹奏楽コンクール、冬のアンサンブルコンテストに加え、近年新たに年中行事となりつつあるのがこの「新人戦」です。1/14日に埼玉で開かれた、第10回となる新人戦の様子を少しばかり見てきたので、レポートします。

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  埼玉県内の吹奏楽関係、学校関係者で発足し、冬季の比較的忙しくない時期の目標として各校の参加を募ったのがきっかけで、いまやすっかり定着した感があります。

新人戦は3年生引退後の時期に、新たな目標をもって新年度の体制を準備するきっかけにして頂こうと、年明けの1月からコンクールの県予選を開催しています。生徒及び指導にあたっている顧問の先生方がしっかりとした目標をもって活動が行えるよう企画したものです。そのため、競うことだけを目的とせず、他団体の演奏を聴くことで今後の練習のヒントが1つでも見つかればと思っております。

                                (埼玉吹奏楽コンクール新人戦 公式ページより引用)

 申し込みは9月末から受け付け、 申込数の多い場合は抽選になるようです。今年は中学が約60団体、高校が約40団体で、参加費審査料が1団体につき10,000円のほか、参加者1人あたり500円の参加料がかかります。いわゆる「都市吹奏楽フェスティバル」のようなものでも参加料を取るところがあることを考えると、審査員にきちんとみてもらってこの金額なら、検討する学校が増えるのも頷けます。

 

 今年は1月7日〜14日間の土日祝、5日間(のべ2会場)で行われ、規模としてはほぼ地区予選と同程度。今回はさいたま市文化センター・大ホールで行われた、中学校と高校の部を聞きました。

 

 会場最寄りの南浦和駅へは京浜東北線でのアクセスです。地元民のみなさんには悪名高い「南浦和どまり」の電車も今回ばかりは問題ありません。前日深い時間まで活動していたため途中からの参戦でしたが、運良く中学校の部も聞くことができました。

 会場へ入ろうとすると、そこかしこで準備運動や声出し、曲をうたって最後の調整にぬかりのない学生さんたちが見受けられます。新人戦とはいえさすがさいたま。

 ホールに入ると、観客はキャパシティの半分もいません。さいたまの県大会ならこの2倍はいるのが普通ですが、地方都市の地区予選を観ているくらいの気分で席を探します。

 たった2つのみですが、長机にのったトロフィーが上手の花道に飾られています。中学・高校ともに最優秀だった学校に送られるのだそう。新人戦なのにトロフィーはあるのだなあと、すこし妙な気分になったのは、夏のコンクール同様に金銀銅の表彰がなされるとは知らなかったから。本当のコンクールじゃないし、てっきり賞はつかないのだとどこかで思っていたようです。

 

 この日は中高あわせて15団体が演奏します。夏のコンクール同様、持ち時間は12分。自由曲も各自自由に選びます。大きく違っているのは「過去に選出されたすべての全日本吹奏楽コンクール課題曲」の中から課題曲が選べる、というところです。ちなみにこのようなランキングも公開されていました。

  

左:会場外観            右:当日プログラム(1冊300円)

 

 プログラムには往年の名課題曲がずらりと並び、曲目を見るだけで心踊ります。ジェイガーの「ジュビラーテ」を選んでいる団体があって刮目。たしかに1978年の課題曲だった(まだ公募制度の始まるまえの話です)作品です。どの団体も趣向をこらして作品を選んでいるようで、ふだんの埼玉県大会や支部大会ではきまりきった作品しか出てこないのと比べると、はるかにバラエティ豊かな作品が並んでいます。戦略的なプログラミング、たとえば90年代の大編成が多かった時代の課題曲に、自由曲でネリベルを合わせるとか、2、3年前の小編成用課題曲に、邦人作曲家のこれまた小編成向けの自由曲を合わせてくるなど、各校の意図が見えるのも面白いです。こうした楽しみは、およそ埼玉の団体では味わえないと思っていましたが、こうした機会があったとは。

 

 そして演奏のほうはというと、新人戦の名前に恥じない立派な「発展途上」ぶりでした。完全に仕上がっている状態を出すわけではなく、日頃の合奏の様子さえ透けてみえそうな感じが、埼玉で聞いているということを忘れさせてくれます。コンクールではきっちり仕上がった隙の無い演奏ばかりですから、こうした演奏も聴けるというのはかなりの「もうけもの」なのでは、とさえ感じます。各校の紹介や意気込みが演奏前にアナウンスされるのもなんだかゆるっとしていて、フェスティバル感が出ています。

 気になった団体としては、川越東高等学校と県立三郷北高等学校を挙げましょう。双方とも課題曲に「ディスコ・キッド」を持ってきましたが、自由曲との組み合わせで各校のカラーがしっかり出ており、川越東はノーブルなポップス路線、三郷北はゴージャスなアメリカンテイストにと、双方ともに聞き応えのあるステージに仕上がっていました。

 ただ審査の結果を見ると、また違った印象を受けました。というのは、個人的にいい構成だったなとか、少人数のところを創意工夫して挑んでいるなという印象をもった団体が軒並み銅賞だったことです。金賞をとったのは、いわゆる「大人数の」「よく鳴る」「音色がよい」学校でした。こうした団体はきっと夏の大会でも上位へ食い込むのでしょうし、新人戦ならではの指針があってもいいのでは、と思ったりしました。このあたり、昨年夏に訪れた長野県の飯田地区大会とどうしても比べたくなってしまうのは、私自身の傾向というか、性格の問題なのかもしれません。

 

 あの曲は久しぶりに実演で聞いたな、そうかこの曲も課題曲だった!…などと思いつつ、荒削りでも生きのいい演奏で自由曲を聴き、ふだんはなかなか知ることのないいろいろな学校のエピソードを知ることもできて、大満足で会場をあとにしました。一応コンクールの体裁をとってはいるものの、もっと多くの人が聴きにきて欲しいと思いましたし、夏の前哨戦としてあれこれ聞き比べるのは絶対楽しいと思うので、これから折に触れてあちこちで吹聴したいなと思います。

  HPを見ると、現在は埼玉以外にも東京、新潟、群馬、石川、山梨の各都県で同様の新人戦が開催されている模様。この「新人戦」というネーミングには反論をおもちの方も少なからずいると思われますが、実際に今回会場を訪れ、聞いてみて「新人戦」以外に普及力のあってしっくりくるネーミングはなかなか無いな、と思ってしまいました。そりゃ「フレッシュ・フェスティバル」とか適当なカタカナで名前をつけることはできたでしょうが、忘れてはならないのはこの大会が、県内の先生方の采配で企画されてきたということ。加えて埼玉県のコンクール熱の高さを考えると、夏の大会のために1時間も無駄にしたくない各校に、新たなイベントへの参加を呼びかけるのにはかなりのご苦労があったことと推察できます。開催意図が一発で伝わるこの「新人戦」、戦いという字こそ入っているものの、そんなに目くじらたてることもないのではないでしょうか、というのが正直なところです。
 次回はぜひ東京など、他の新人戦も聞きにいってみたいなと思う、よき体験でした。

 

  

左:客席は結構がらがら        右:ロビーにはリペアブースも